平成29年6月16日に当法人の保護者会である上総柊会・柊会が行った「千葉県行政職員による知的障がい者虐待事件と同事件の刑事告発関する記者会見」がテレビ朝日等において報道された件に関しまして、当法人としての事件の経緯等をご説明させていただきます。
【全文】
○ 「千葉県行政職員による知的障がい者虐待」に関する記者会見について
【該当報道】
○ テレビ朝日(Abemaニュース:http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000103356.html)
【刑事告発状】
1.千葉県障害福祉課職員に対する刑事告発について
当法人は、平成28年10月5日、千葉県警本部捜査1課に対し、千葉県障害福祉課職員を公務員職権濫用罪(刑法193条)での刑事告発を行い、同日受理されました。
現在、千葉県警本部捜査1課により、裁判所の令状に基づく差押え及び被疑者(千葉県障害福祉課職員[当時]、現在は部署が解体され障害福祉課が存在しておりません。)に対する事情聴取が実施されています。
以下、刑事告発に至る経緯及び保護者会(上総柊会・柊会)が記者会見を行うに至った経緯等についてご説明いたします。
2.刑事告発の対象となる事実関係について
(1)刑事告発の対象たる千葉県行政職員による障がい者虐待行為
千葉県障害福祉課職員(当時)は平成27年11月26日に柊の郷に対し障害者総合支援法第48条1項に基づく立入調査を実施した際、当法人を利用される知的障がい者の方々に対し、下記行為を行いました。
① 千葉県障害福祉課職員は、当法人を利用される知的障がい者3名(障害支援区分4~5、未成年の女性、言葉を話せない方を含む)を、本人や保護者等の同意を得ることなく当法人の施設外に連れ出しました。
② 施設外に連れ出された障がい者3名は、近隣の公民館内の一室に一人ずつ入室させられた後、保護者や後見人の立会いすら無い状況で、暗く狭い密室で千葉県障害福祉課の男性職員複数名と対峙させられつつ録音を伴う質問調査を長時間に渡り実施され、障がい者の方が意に沿わない回答等を行った際には威圧的・誘導的な質問が行われました。
(2)障がい者の方々が受けた被害結果
千葉県障害福祉課職員による質問調査を受けた障がい者の方々は、極めて強いストレスを受け、質問調査終了直後から下記の様な状況に陥り、現在でも強い不安感を覚えて生活をしています。
① 質問調査を受けた女性の障がい者の方は、強い恐怖感から当法人内で号泣し、極めて不安定な精神状況に陥りました。そして、当日夜には、質問調査の不安感から靴紐で自らの首を絞める自殺未遂を行い、その後もストレスから自らの髪の毛を抜く、「県庁」「役所」といったキーワードに過敏に反応するといった状態が継続しました。
現在でも、千葉県職員を連想させる「スーツ姿の見知らぬ男性」を見かけると質問調査当時のことをフラッシュバックし、不安定な精神状況に陥ることがあり、医師からPTSDに準ずる内容の診断を受けております。
但し「スーツ姿の見知らぬ男性」に対して恐怖感を覚えるのは上記障がい者の方だけではなく、当法人を利用する数多くの障がい者の方がスーツ姿の見知らぬ男性に対する恐怖感を抱き続けています。
その結果、当法人では現在、スーツ姿の来訪者に対しては、最低限施設内ではジャケットとネクタイを脱いでいただくよう徹底しております。
② 質問調査を受けた未成年の女性の障がい者の方は、強いストレスから当法人内で極めて不安定な精神状況に陥りました。同人は質問調査当日以降も、質問調査によるストレスから不安定な精神状況を度々訴え、他の利用者の方々との衝突が生じることとなりました。
現在では、質問調査のことを思い出す施設から移りたいとの同利用者の意向を受け、他法人の施設で生活していただいております。
3.千葉県健康福祉部障害福祉課(当時)の対応等について
(1)本件立入調査の目的・理由の回答拒否
下記の通り、当法人及び保護者会は千葉県に対し、立入調査の目的の開示を求めておりますが、刑事告発が受理された現時点においても千葉県は回答を拒否・無視しており、目的等が明らかになっておりません。
① 当法人は、立入調査当日に千葉県障害福祉課職員に対し、口頭及び書面にて立入調査を行った目的・理由に関し、開示を求めました。
しかし、千葉県障害福祉課職員は「必要だから行う。」以外の回答を行わず、書面による理由開示も拒否されております。
② 平成29年3月29日、保護者会である上総柊会・柊会の両会長は、千葉県障害福祉課職員と面談を行い、障がい者を立入調査対象とした理由・目的及び精神的虐待を行った件に関して質問を行いました。
当該質問に対し、同課職員は「回答できるかを含めて検討する。」と述べ、現時点に至るまで何ら保護者会に対する回答は行われておりません。
(2)千葉県による再度の立入調査予告と刑事告発
平成28年7月下旬、千葉県障害福祉課は柊の郷に対し、時期及び対象者を明示することなく再度の立入調査を実施する旨の通告を行いました。
当法人としては、当初の立入調査の目的が明らかにされておらず再度障がい者の方々が行政職員による虐待を受ける可能性があること、また当法人と同様の虐待被害が千葉県内外の全国で発生していることなどから、障がい者の方々を行政による虐待から守るために、平成28年10月5日に千葉県庁に対する刑事告発を行い受理され、現在に至る次第です。
(3)千葉県障害福祉課の部署解体及び告発対象者の人事異動
千葉県は平成29年4月1日付にて、千葉県障害福祉課を解体し、告発対象者である障害福祉課職員全員を他部署又は千葉県庁外施設への人事異動を行いました。
なお、前述のとおり保護者会である上総柊会・柊会は、平成29年3月29日に千葉県障害福祉課職員に対して申し入れ等を行い、当時の担当者より回答する旨の返答を受けました。しかしながら、当然障害福祉課の部署解体や人事異動は内定していたはずであるのに、後任の担当部署や担当者の通知が行われず、極めて不誠実な対応を受けております。
結果として、本件事件に関し説明を行うべき窓口は消滅させられ、保護者会である上総柊会・柊会が行った質問に対する回答窓口も設定されていない状況が継続しています。
4.人権意識の欠如した千葉県の障がい福祉行政と県議会議員について
(1)平成25年11月26日、「千葉県立袖ヶ浦福祉センター養育園」において、千葉県が設立した施設の職員5名が同施設利用者10名に対し暴行等の虐待を行い、結果19歳の男性の障がい者の方を死亡させています。当該事件が大ニュースとして報道された結果、当該県立施設内では複数の施設職員が恒常的に暴行などの虐待行為を行っていたことが明らかになり、千葉県職員の障がい者に対する人権意識の欠如が追及されました。
このような大事件を引き起こした2年後に、最も障がい者に配慮しなければならないはずの千葉県障害福祉課職員が、当法人を利用する障がい者の方々に虐待行為を行っており、千葉県職員の障がい者に対する人権意識が全く改善されておらず、同様の事件が今後も生じかねない状況が続いております。
なお、千葉県立袖ヶ浦福祉センターでの障がい者虐待死事件は、結果として10名の施設職員の関与が認められたにもかかわらず、1名が傷害致死の実刑判決を受け、他の9名は全員が不起訴処分となった。報道によると不起訴となった施設職員9名の虐待関与は明らかである。
(2)平成29年2月22日の千葉県健康福祉常任委員会にて、本件虐待事件及び刑事告発に関しての質疑が行われた際、健康福祉常任委員・伊藤和男県議より『障がい者に対する録音を伴う質問調査を今後もどんどん実施するべきである』旨の発言、『知恵遅れ、知恵遅れ』と障がい者を差別する発言が連呼されました。
千葉県の福祉行政を長年担ってきた専門委員の県議会議員が、公の場で障がい者に対する差別発言を連呼し、千葉県障害福祉課職員が障がい者に対して一切配慮せずに質問調査を実施した件を無視して、今後も同様に行うべきと発言したことは、千葉県議会自体が障がい者に対する人権意識に欠けるものと言わざるを得ません。
(3)上記のとおり、過去に生じた千葉県立施設内での職員による障がい者虐待死亡事件の発生、当該虐待に関与した10名中1名のみの実刑判決処分、そして本件刑事告発事件に関する千葉県議会議員・伊藤和男県議の虐待奨励発言等を踏まえると、当法人は千葉県行政における障がい者に対する人権意識の欠如が未だ著しいものと考えざるを得ません。
同様に、他道府県市町村や障がい者団体も想像を絶する事態であり、他の地域では考えられない千葉県職員の人権意識の欠如であると認識されています。
5.柊の郷の今後の対応方針について
(1)千葉県が障がい者の方々を立入検査の対象とし、前述のような重大な被害結果を生じさせたことは、障がい者に対する重大な人権侵害であり絶対に許されません。
すなわち、未成年者や言葉を話せない障がい者の方々まで質問調査の対象とし、本人や保護者の同意を一切得ることなく施設外に連れ出した行為それ自体が、未成年者略取罪(刑法224条)・逮捕罪(刑法220条)に該当する犯罪行為です。
そして、質問調査に対する拒否の意思表示すら行えない方を質問調査の対象とし、見知らぬ公民館の密室に一人ずつ障がい者を入室させ、保護者や後見人の立会いを一切認めず、複数名の男性行政職員により録音を行いつつ質問調査を行う行為は、突然の状況変化に対応が困難な知的障がい者方々にとって極めて重大なストレスであり、精神的虐待そのものです。
千葉県障害福祉課は障がい者の特性を最も把握している部署であり、その専門部署の人間がこのような障がい者に対する虐待行為を行ったことは絶対に許されることではありません。
本件虐待事件は平成28年10月5日に刑事告発が受理されましたが、受理されてから8か月以上が経過する現在においても、警察の捜査が継続しており検察対して事件送致すら行われておらず、障がい者の方々や保護者の方々は未だに不安を強いられています。
そして、過去には千葉県立施設内で施設職員による障がい者虐待死事件が発生していること、千葉県が柊の郷を利用する障がい者の方々を立入調査対象とした理由及び目的が明らかにされていないこと等から、人権意識が欠如した行政職員により障がい者の方々が再び虐待を受けかねない状況が続いております。
当法人は、二度と同様の行政による虐待被害を生じさせないため、保護者会とともに今後も活動を行ってまいります。
なお、上総柊会・柊会のホームページ(twitter)にて、保護者会としての見解の公表を予定しておりますので、下記リンクよりご確認下さい。
(2)社会福祉法人柊の郷は、千葉県が柊の郷という事業者・法人に対して立入検査・法定監査等を実施することについて、適切なサービスを提供し続けるためにも当然受け入れるべきものと考えており、今後も千葉県の実施する立入検査・法定監査に対して積極的に協力してまいります。
また、当法人は自発的に外部監査等を受け入れており、現在TMI総合法律事務所や監査法人よつば綜合事務所による監査等を実施しており、今後も継続してまいります。
しかし、重ね重ねになりますが、障がい者の方々の日々の生活や障害特性に配慮しない立入調査に対しては、当法人は障がい者の人権を守るためにも断固として反対し、障がい者の人権に配慮した適切な対応を千葉県のみならず全国の行政に対して求める次第です。
社会福祉法人柊の郷
理事長 足高 慶宣
【参考:社会福祉法人柊の郷 保護者会 上総柊会・柊会ホームページ】
記者会見に関する保護者会の見解等は下記アドレスからご確認ください。
https://twitter.com/chiba_oyan
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