昨年7月に相模原市・津久井やまゆり園で発生した凄惨な許しがたい事件に関し、ここ数日で気になることがニュースになりましたので、記事にさせていただきます。
普段のブログのような楽しい話題ではないのですが、是非皆さんにも知っておいていただきたいので、目を通していただければ幸いです。
【記事①】やまゆり園、建て替えに異論噴出 大施設「時代に逆行」(朝日新聞デジタル)
http://www.asahi.com/articles/ASK1R7HJ2K1RULOB01B.html
【要約】
①障がい者団体・有識者「『施設から地域へ』という障害者福祉の流れに逆行する」
②やまゆり園家族会会長「地域への移行ができないから園で暮らしている。現実を考えたら一日も早い建て替えを」
【記事②】
やまゆり園入所者、障がい者施設団体が受け入れ表明へ(TBSNews)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2966739.html
【要約】
①横浜市知的障害関連施設協議会が、津久井やまゆり園の入所者を、グループホーム等に受け入れる用意があると表明した。
②同協議会は、「生まれ育った地元で自分らしい生活をしてほしい」としている。
1.「入所施設=悪」「地域移行=正義」というスローガン
「障がい者の地域移行を推進しよう!」
このブログをご覧になっている方でしたら、どこかで必ず聞いたことのあるフレーズではないでしょうか?
これは「障がい者にとっては地域で生活することが一番の幸せであり、施設に入所させることは悪いことだ。」という理念を前提にしたフレーズであり、国・行政や多くの障がい者団体が口を揃えて掲げているスローガンです。
今回の津久井やまゆり園再建に対する障がい者団体等の反対意見も、このスローガンを前提になされています。
2.地域移行が困難な方々も数多くいらっしゃるという現状
でも本当に全ての障がい者の方々にとってそうなのでしょうか?
本当に全ての障がい者の方にとって、施設を出て地域で暮らすことが一律に幸せなのでしょうか?
もちろん、ご家庭でご家族と一緒に生活することが可能であり、障がい者本人や家族の方々の笑顔に繋がるのであればそれが一番です。
柊の郷も障がい者の方々の笑顔に繋がることであれば全力で協力する所存です。
しかし、ご自宅でご家族と一緒に生活することが困難だからこそ、またグループホームの支援では対応しきれないからこそ、入所施設を利用されている方々も沢山いらっしゃるはずなんです。
例えば、トイレ介助が常時必要な方、食事の全介助が必要な方、常時付添いが必要な方々にとって、入所施設であれば365日・24時間、支援員による対応が可能です。
でも、ご自宅でご家族と生活されている場合、利用時間が定められたデイサービスや訪問介護等の利用とご家族の支援だけで、入所施設と同じような365日24時間の支援が可能なのでしょうか?
今回の津久井やまゆり園建て替え反対のニュースに関し、やまゆり園家族会会長は、「地域への移行ができないから園で暮らしている。現実を考えたら一日も早い建て替えを」とコメントされています。
津久井やまゆり園は、重度の知的障がい者の方々を数多く受け入れられていた施設です。
そのような施設の家族会会長が「地域への移行ができないから園で暮らしている。」と述べられていること、これが本当の『現実の生の声』なのではないでしょうか?
柊の郷でも、「本当は入所施設に入れてあげたかったが、どこも空きがない。」「他のグループホームでは受け入れてもらえなかった。」という保護者さん、利用者さんの現状を身をもって経験しています。
3.障がい者団体のあるべき姿と現状の弊害
本来、障がい者団体は、津久井やまゆり園家族会会長のコメントのような『現実の生の声』を国・行政に訴え、あらゆる手段を講じてでも戦い、国や行政を理解させる活動をするべきです。
しかし、現状多くの障がい者団体は、国や行政と一緒になって「入所施設=悪、地域移行=正義」という耳障りの良いスローガンを繰り返し述べています。
このような津久井やまゆり園の『現実の生の声』を無視し、耳障りの良いスローガンを繰り返して国の施策に迎合するだけの団体なんて、百害あって一利なしではないでしょうか。
例えば、2つ目のニュースで、横浜市知的障害関連施設協議会が「津久井やまゆり園の入所者をグループホームで受け入れる用意がある。」と述べたことが記事になっています。
しかし、津久井やまゆり園は、重度の知的障がい者の方々が数多く利用されていた施設です。
その重度の知的障がい者の方々を、グループホームで本来想定される支援内容で受け入れることが本当に可能なのでしょうか?
仮に重度の知的障がい者の受け入れは困難であるのにこのような提案をされたのであれば、記事にあるように津久井やまゆり園の再建に重大な支障をきたしかねません。
4.終わりに
障がいをお持ちの方々が常に笑顔でいてくれること、柊の郷はそれが一番大切だと考えます。
現状のように制度に合わせて障がい者の方々への支援内容や場所を変えるのではなく、『現実の生の声=障がい者の方々のニーズ』に合わせた制度設計がされなければなりません。
柊の郷は今後も、国・行政が掲げる「入所施設=悪」という固定観念にとらわれず、「何が利用者さんにとって一番大切なのか」「どうすれば笑顔でいてくれるのか」を考えて声を上げていきます。
今後も本ブログや親の会等で情報提供をさせていただきますので、保護者の皆様も私達と一緒に声を上げていっていただければ幸いです。
宮崎様
ありがとうございます。
「利用者様の幸せ追及」を全職員のスローガンにして頑張っております。
貴重な情報をありがとうございます。
本当にみなさんそれぞれに抱える問題や状況が異なる中、これが正しいとか悪いとか決めてしまうのは、本来もっとあるかもしれない可能性を狭めてしまうかもしれません。
主様がおっしゃる「何が利用者さんにとって一番大切なのか」「どうすれば笑顔でいてくれるのか」に尽きると思います。
「現実の生の声」が反映されていくことを願います。